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 いよいよ始まる駅伝シーズン。駒澤大学は「原点と信念」をスローガンに掲げ、今年も厳しい夏合宿で鍛錬を続けてきた。昨年の悔しさを胸に刻み、捲土重来を期す者。エースの座を狙う者。駅伝の先まで見据える者。今年を「勝負の年」と位置づけ、戦いに挑もうとする選手たちの思いを聞いた。


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「前回の箱根は悔しさしか残っていないんです。録画した中継は、今も見ることができません」
 そう語るのは中村佳樹(4年)だ。前回は10区で出場。3位でタスキを受け、順位を落とさず東京・大手町のフィニッシュまで届けたが、区間順位は12位に留まった。後半にペースダウンし、タイムを落としてしまったと唇をかむ。

 悔しさを晴らすために、今季は徹底したスタミナ強化に励んできた。毎日のジョグから距離を延ばし、夏合宿では初めて40キロ走にも挑戦。今は、少しずつ自信が芽生えている。

「昨年度は故障者が出て、補欠としての出場でした。でも今年は、自分の力で出場機会を手にしたい。そして区間3位以内が目標です」

 子供の頃からの夢であり、中村の走る原点である最後の箱根で最高の走りをする。中村の目は今、そこだけに向いている。


最終学年の駅伝シーズンを真正面から見つめている中村

 今季、新たにエースの座を狙うのが高本真樹(3年)だ。同学年ですでにチームの中心となっている工藤有生が日本陸連の強化合宿に参加し、駒大の夏合宿を中盤から離脱。その間に、自分を変えようと高い意識で練習に取り組んできた。

「この夏にレベルアップし、工藤と並んで“3年生のWエース”と呼ばれる存在になりたいと考えたんです。Aチームで自分が常に引っ張る走りをし、チーム内でも存在感を示すつもりでやってきました」

 昨年度は全日本、箱根と2つの駅伝に出場。すでにチームになくてはならない存在ではあるが、今年は三大駅伝すべてに出場し、主要区間で区間賞を目指す。「それが自分の役目だと思っています」と、決意をにじませる。

強い気持ちでチームを牽引する気概を示す高本

 そして駅伝の先まで見据えて夏を過ごしたのが大塚祥平(4年)である。夏合宿ではただひとり45キロ走に挑んだ。これは、駅伝以降のマラソン挑戦に向けた下地づくりが狙い。疲労の残る合宿3週目、アップダウンの激しい野尻湖畔(長野県)のコースをパーフェクトな内容でこなしてみせた。

「与えられた練習をこなすだけでなく、厳しい練習の時こそ自ら先頭に立って引っ張るというのが自分の信念です。この夏は4年間で一番いい練習ができたと思います。自信もつきました」

 マラソンに向かう前に、果たさなければならないことがある。駒大入学後、大塚は自分が走った駅伝での優勝がまだない。4年生として自分の走りで、悲願の勝利を手繰り寄せるつもりだ。

マラソン挑戦を視野に入れ、充実した夏を過ごした大塚

 彼ら3名の夏のテーマは、スタミナ強化。合宿中は徹底的に走り込む毎日を送ったが、練習以外のさまざまな点にも気を配り、コンディションの維持に努めてきた。

「故障しないことを第一に考え、練習後のケアを大切にしてきました。また体力を維持するためにも合宿を通じてごはんもおかずも全部残さず食べています。普段より量も多めにしています」(中村佳樹)

「特に距離走を行う前にはしっかりごはんを食べるようにし、体重も少し重いくらいで臨むむように心がけました。エネルギー切れを起こさないように、VAAMのゼリーを利用したりしています。距離走後半になっても不安なく、集中して走れたのはこうした取り組みが大きいと思います」(大塚祥平)。

補食やサプリメントの使い方は、長距離選手が身に付けたい能力だ


 高本は夏合宿中、体重の維持に努めた。練習がハードになると食事もなかなかのどを通りにくくなるが、大塚同様、距離走の前日から意識して炭水化物(糖質)を増やすようにし、また練習前にも補食を摂ったという。

「意識して食べないとどうしても体重が落ちていくので、かなり気をつけました。食事は練習と同じくらい大切だと考えています」

 大八木弘明監督も強くなる選手の条件として「しっかり食べられる選手」を挙げる。
 普段の食事でしっかり栄養を摂り、練習前のアミノ酸や必要に応じた補食を活用してエネルギー切れを起こさないよう準備を行う。さらには練習後のケアを怠らない。この積み重ねが練習を継続できるカラダへとつながり、走力向上を生み出すのだ。

毎日の食事を「練習と同じ」と位置づけている高本


 キャプテンの浅石祐史(4年)は夏を経て、チームが変わってきたと手ごたえを口にする。エースに次ぐ中堅クラスの選手たちが練習で積極的な姿勢を打ち出すようになり、メンバー争いが目に見えて激しくなった。

「練習だけでなく、生活面から勝利に向かって努力する姿を示すというのが自分のキャプテンとしての信念。それがチームに伝わってきたようで、下級生も遠慮なく上級生に立ち向かうようになりました。競争が激しくなれば、チームの戦力はさらに上がります。今はとてもいい雰囲気です」

チーム内の理想的な競争関係に、手応えを感じている浅石主将

 大八木監督がチームの指導に携わり、22年目を迎えている。これまでの三大駅伝の成績は、圧巻の内容だ。

 選手たちは、駒澤大学のタスキの重み、そしてそれぞれの思いを胸に抱き、頂を目指す。今年も魂のこもった走りが見られそうだ。

文/加藤康博 撮影/水上俊介


おおやぎ・ひろあき◎1958年7月30日・福島県生まれ。2004年4月に母校・駒澤大学の監督に就任。同大学指導歴22年目(コーチ時代を含む)ながら、大学三大駅伝21勝を誇る。一貫した少数精鋭のチーム運営で大学長距離界を代表する選手を輩出し続けている。自らも駒澤大学の主力選手として活躍した。


ITADAKI;第1回 畑瀬聡 / 第2回 福島千里(1) / 第3回 福島千里(2) / 第4回 駒澤大学(1) / 第5回 駒澤大学(2) / 第6回 駒澤大学(3) / 第7回 駒澤大学(4) / 第8回 大迫傑