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駒澤大学の夏は、今年も熱かった。
ルーキー8名はスタミナづくりのための距離を踏み、月間1000km突破者が続出。 秋シーズンの記録更新を楽しみにさせる頑張りを見せた。そこで下級生が台頭すれば、駅伝シーズンが一層楽しみになる。
8月の野尻湖(長野)で走り込む駒澤大学を訪ねた。


※記事の最後にプレゼント情報がありまます。

「今年の1年生は皆が明るく、結束が強い。このメンバーで強くなろうという思いをひしひしと感じます」
 藤田敦史コーチは、今年の1年生を「楽しみな学年」と期待している。
 これまで多くの名選手を輩出してきた駒澤大学には、1年生を伸ばすノウハウは蓄積されている。昨年4月にOBでマラソンの前日本記録保持者の藤田コーチが加わり、上のステージを目指して力をつけていくための意識づくりも力を入れている。

 強くなるための条件として、藤田コーチは「自分で考え、行動できる選手になることが必要」と話す。
「言われた練習メニューをただやるのではなく、なぜそれをやるのかを考えられる選手になりなさいと指導しています。やらされる練習と、意味と目的を理解して自分から進んで行う練習とでは得られる成長が違うからです。与えられるメニューをただこなすのではなく、それで自分の体はどう変化したのか。どんな結果を手にできたのかを振り返り、次にとるべき行動を考えられる選手が理想です」

 高校と大学では、競技環境が変化する。練習は質、量ともに強度が増し、判断が個人に任される場面も多くなる。競技者としての経験が乏しい1年生のなかには戸惑いの表情を見せる者もいるが、そんな時でも駒澤大学の指導陣はすぐに答えを示さない。自分はどう感じているのか? 今、自分には何が足りないと思うか? など、質問を投げかけ、選手本人からの言葉を導き出す。


「考えられる選手になるための基本は、自分自身を知ることです。今は練習でもAチーム、Bチームの振り分けは選手自身の判断に委ねています。自分の能力を過信してAチームで練習をした選手がいたとします。そこで足を痛め、その後の練習が継続できないようでは、強くなれません。自分を知ってこそ練習でも試合でも正しい判断ができますし、本当の意味で考えられる選手だと言えるのです」

 8月。1年生は初めての夏合宿に挑んだ。起伏の激しいコースでの距離走、標高の高い場所でのインターバルトレーニングと、新人選手にとってはかつて経験したことがないほどハードな3週間となった。

 その過程で藤田コーチは自主的にケアの時間を長くとっていた原嶋渓の姿が印象に残っているという。疲労がたまりやすい自分の体の特徴を理解しているからこそ、そうした行動ができるのだと、その取り組みを高く評価している。


 藤田コーチの言葉にあるように、強い選手になるためには何より練習の継続が大切だ。故障や体調不良を未然に防ぐためにはケア、食事、睡眠が練習と同じくらい重要になる。そのため駒澤大学ではコンディション管理の指導も徹底している。

「一番は血液検査です。毎月必ず採血し、データをチェックしています。数値が低い項目があれば、対処方法はすぐに指示します。これは、いくら考えても答えを導き出せないものだからです。自ら考えて答えを出すためには、知識を持つ必要があるんです」

 夏合宿には長年、VAAMを中心にサポートする(株)明治による栄養講習会を実施した。ハードなトレーニングを繰り返す長距離選手にとっては、栄養や食事といった知識を得て、実践するチカラを身に付けることは、基礎体力を高め、大きな飛躍につながる。基本的な栄養素の働き、バランスのとれた食事の摂り方、そして使用するアミノ酸やプロテインの知識を学んだ。「これからは栄養素の役割を理解しながら食事するように心がけます」(佐々木聖和)、「緑黄色野菜をなるべく多く摂るようにしていきたいです」(中村大聖)と、1年生たちも意識が変わった様子だ。

 駒澤大学の1年生は入学以来、選手としての土台固めのトレーニングを中心に行ってきた。他大学の1年生がトラックで好記録を出しても、藤田コーチは「焦ってはいけない。今はスピードを乗せられる体を作る時期。秋になればいくらでもスピードを出せるようにする」と語りかけ、地道なトレーニングを繰り返してきた。

  5000mのベスト記録は、8月末時点で高校時代のままだ。だが、3週間に及ぶ夏合宿を終えた今、土台作りは狙い通りの水準に達したと藤田コーチは感じている。ここから、いよいよ実りの秋を迎える。

「今年の1年生の練習の出来は、私たち指導陣の想像以上です。正直、驚いています。秋にはトラックで自己ベストを更新する選手が続出するでしょう。そして、駅伝メンバーに一人でも多く加わってほしい。そうなれば上級生も刺激を受け、チームはより活性化します。1年生には、また秋に驚かせてほしいと期待しています」

 大学駅伝では常に3位以内をキープし、安定した強さを見せている駒澤大学。今季、頂を目指すためのカギは1年生の台頭にあると言えそうだ。


文/加藤康博 合宿撮影/水上俊介



駒澤大学の1年生8名のアンケートを公開!
夏合宿の充実ぶりが伝わってきます!

質問:①8月の月間の走距離は? ②夏合宿で特に力を付けたと感じるチームメートは? ③駒澤大学の練習の特徴は? ④大学での練習量は高校時代の何倍くらい? ⑤秋シーズンの目標 ⑥好きな夕食

ふじた・あつし◎1976年11月06日・福島県生まれ。高校時代のベスト記録は5000m14分50秒台だったが、駒澤大学に入学し、1年時から大学駅伝で活躍。スピード持久力を武器に成長を続け、卒業後はマラソンで活躍。世界陸上選手権セビリア大会6位入賞、およびエドモントン大会男子マラソン日本代表(12位)、男子マラソン前日本記録(2時間06分51秒)などの実績を残した。2015年4月からコーチとして母校の指導に取り組んでいる。

ITADAKI;第1回 畑瀬聡 / 第2回 福島千里(1) / 第3回 福島千里(2) / 第4回 駒澤大学(1) / 第5回 駒澤大学(2) / 第6回 駒澤大学(3) / 第7回 駒澤大学(4) / 第8回 大迫傑