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ランキング
写真は女子やり投の上位選手。左から斎藤真理菜(国士大4年)、北口榛花(日大2年)、山下実花子(九州共立大2年)

 陸上競技は、記録の優劣で順位が決まる。だが、記録にだけ注目していると、魅力ある選手たちを見逃してしまう。ここでは、そんな選手たちに注目した3つのストーリーを紹介!(文/寺田辰朗:陸上競技ライター)

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No.2 日大 vs. 国士大
男女やり投で逆転"の応酬

 男女やり投の充実を物語る好勝負が繰り広げられた。先に行われた女子は6投目に日大の北口榛花(2年)が、国士大の斎藤真理菜(4年)を逆転。男子は6投目に国士大の小南拓人(4年)が、日大の小椋健司(4年)を逆転した。女子の1・2位差は25cm、男子は21cm。ライバル校同士のハイレベルの戦いが、初の日本インカレ開催地となった福井で展開した。

女子やり投
初の60m決戦 北口 vs. 斎藤

 女子の60m決戦は、学生同士では史上初。2投目に斎藤が60m24と自身の大会記録を2m以上も更新。対する北口は3回目まで53m06が最高で、勝負あったかに見えた。

 だが、北口は4回目に56m11、5回目に58m54まで記録を伸ばすと、最終6回目に60m49を投げて逆転した。

「今日の60mは、何か吹っ切れた感じがします。細かいところを考えるのをやめて、こことここ、とポイントを絞ってやってみました。7月に動作解析をしていただき、ラストクロスのときの左手の位置が低いと指摘されたので、左手を上げるようにしました」

史上初の60m決戦を制した北口榛花 撮影:中野英聡


 一方の斎藤は、インカレで60mを投げて負けた、初めての選手となった。

「良い試合だったのかもしれませんが、自分の中では悔しさしかありません。後半3投は力みがあり、やり先が上がってしまいました」

 学生女子やり投で、60m時代台の幕を開けたのは年下の北口だった。昨年5月のゴールデングランプリ川崎で61m38と、歴史的な一投を投じた。セカンド60m台も北口で、同年7月の南部忠平記念。地元の北海道でリオ五輪標準記録(62m00)に挑み、惜しくも届かなかったが60m84の快投を見せた。

 海老原有希(スズキ浜松AC)が日本代表を続けて世界と戦っていたが、学生女子やり投は北口時代になると思われた。

 それにストップをかけたのが斎藤だった。斎藤は今年3月の国士大競技会で60m01を投げて2人目の学生60mスローワーになると、5月の関東インカレに61m07で優勝し、学生記録にも肉薄した。8月の世界選手権で60m86の世界選手権日本人最高記録、そして台北ユニバーシアードでは62m37の学生新&海外日本人最高と、活躍の場を世界に広げた。

 斎藤が北口に取って代わった、と思われたなかで迎えたのが今回の日本インカレ。斎藤に疲れがあったのは事実だが、ひじの故障で動きを見失っていた北口が今回の優勝で、世界ユース金メダル(2015年)の勝負強さを取り戻した。10月のえひめ国体でも61m07の大会新で斎藤に2連勝した。

男子やり投
熱い同学年対決 小南 vs. 小椋

 男子は上位4人が接戦を展開していた中での、6投目の逆転劇だった。小南拓人(国士大4年)は、5投目終了時には75m64で4位。

「表彰台に上がりたい気持ちはありましたが、それよりも技術的に抑えるポイントを意識しました。やりの向きを右に外して力がまっすぐに伝わらないことが多いので、全体的な姿勢を良くして、前屈みにならないようにしました」

 6回目は78m53と記録が伸び、小椋健司(日大4年)、相原大聖(日大4年)、石山歩(中京大3年)の3人を逆転。小椋も6投目に78m32と伸ばしたが、小南に僅かに届かなかった。

 小椋も「調子が良く、80mも行けると思っていました。納得できる投げは1本もありません」と、女子の斎藤と同様に悔しさを露わにした。

 その小椋が、日大と国士大のライバル関係についてコメントしてくれた。

「ユニバーシアードは男女とも、2つの大学で1人ずつ代表を出して、北口は斎藤さんのことをライバルと思って頑張っていたと思いますし、自分も小南をライバルと思って、高いレベルで切磋琢磨してきました」

 ユニバーシアードでは女子は斎藤が銀メダルで、「予選と決勝では別人みたいに崩れてしまった」と言う北口はベスト8に残れず10位。男子は小椋が9位と入賞に迫ったのに対し、小南は70m43で予選落ちした。

 日本インカレでは男女とも、ユニバーシアードとは順位が逆転。小南は、「一番勝ちたいと思うのは新井(涼平・スズキ浜松AC)さん」と、国士大の先輩の名前を挙げたが、「小椋とは勝ったり負けたりで、勝率は5割。最後の国体で勝ってシーズンを終わりたい」と、宣言した通りに国体でも小椋に1m74の差で勝利を収めた。

 同学年のライバルに勝つことで、日本の第一人者への挑戦権を得ようとしている。

男子やり投のネクスト第一人者候補生。左から小椋健司(日大4年)、小南拓人(国士大4年)、相原大聖(日大4年) 撮影:田中慎一郎

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